~ プロローグ ~
三月中旬。記者Oさんから指令が届きました。
「今回は壬生に行ってもらいます。割烹のお店です」
「割烹ですか? 割烹って刺身のイメージが強いですけど、和豚もちぶた人気なんですか?」
「そこを探るのです。行ってらっしゃい」
というわけで、基本的に公共交通で移動する記者T、東武電車で壬生駅へ。
宇都宮から約20分。意外に近いです。
ちょっと早めに着いたので、駅前の和菓子屋さんをのぞいたところ、お茶を出してくれました。
「宇都宮から? なにしに来たの」
「飲食店の取材で来たんです」
「ああ、『旬香』さん?」
「ご存知ですか?」
「おいしいわよ。ランチも混んでるし。法事とかあって貸し切りだと入れない時もあるのよ」
地元でも人気のお店のようです。
本格和食が気軽に味わえる。地元の人気店「日本料理 旬香」
壬生町役場のすぐ近く、駅から歩いて10分ほどで、目指す旬香さんに到着。記者Oさんと合流します。
ちょうど女性のお客様が大勢お帰りになるところでした。
「すごいですね。お客さんがいっぱい」
期待を胸に、店内へ。
さっそく、店主・鈴木浩さんにお話をうかがいます。
「こちらのお店はいつからやっていらっしゃるんですか?」
「平成20年からです」
あ、やっぱり。お店の外観が、まだ新しい感じがするなあと思ったんです。
「もともとこちらでお仕事をされていたんですか?」
「最初は天ぷらの専門店に10年いました。
地元がここなので、いつかは戻って店をやりたいと思っていましたが、
壬生で天ぷらだけで店を続けるのは難しいだろうとも思いましたので、
和食の店でその後10年働いてからここを始めました」
「和豚もちぶたをお使いになるきっかけを教えてください」
「壬生には、和豚もちぶたの生産者が3軒あるんですよ。近所にね。
それで、もともとおいしいと聞いていたので、使おうと思っていたんです。
関口肉店さんがいらっしゃったのは、その後なんですよ」
地元の第一次産業と飲食店のネットワークができあがっているんですね。
これは、地産地消の匂いがする!
地場食材を活かしたこだわりのメニューたち。ランチの品数は圧巻!
「生産者の方とつながりがあるんですね。」
「そうですね。あ、良いメニューがありますよ。壬力丼(みりょくどん)っていうんですけど」
「壬力丼?」
「和豚もちぶたとシイタケなどの野菜を塩ダレで炒めて、
壬生産の有機野菜のサラダに載せたものです。
それに、カミナリ汁が付きます」
「カミナリ汁ってなんですか?」
「普通はゴマ油でこんにゃくを炒めて作るんですけど、
壬生では役場の人なんかも入れて、何か御当地メニューができないかと言われて、
うちで。卵とじとかんぴょうと、海苔を入れて。県内のグルメ選手権にも出ました」
「そうだ。栃木は味噌汁にかんぴょう入れるんですよね」
「二十歳以下の人は、給食で食べてると思いますよ」
「給食で出るんですか。馴染むでしょうね」
「うちではランチにもお出ししてます」
そう言ってメニューを見せてくださったのですが、
「この辺がランチメニューですか?」
「あ、これ1冊ランチメニューです」
「ええっ!?」
ランチメニューだけで30種類以上! 何度も来たくなるのもわかります。
「そういえば、さきほど女性の団体さんをお見かけしましたけど、ランチは女性が多いですか」
「8割から9割女性ですね。比較的年齢層が高いです。
まあうちは和食ですから、そんな感じになるんでしょう。
夜は、これからの季節は歓送迎会なんかも入りますけど、
普段はお祝事とか法事とか、集まりでお使いいただくことが多いです」
「和食のお店で、年輩の方がランチに召し上がるというと、
どちらかというと肉より魚を選びそうですが、和豚もちぶたの評判はどうですか」
「いいですよ。脂が甘いのと、しつこくなくて胸やけしないと言われます。
和豚もちぶたメニューはいくつかありますが、角煮が一番人気です。
本当は今の倍くらい脂身を付けてお出ししたいのですが、見た目で敬遠されても困りますので、
半分くらいにしています。それでも一般的なものよりは付いているでしょうね。
お客様の中には『私は脂身はあまり・・・』とおっしゃる方もいますが、
この脂は違いますからと説明して試しに召し上がっていただくと、皆さんおいしいと言われますね」
さすが和豚もちぶた、脂の魅力!
「じゃあ、今回の試食は角煮で」
「でもカツ煮もおいしそうですね~」
・・・かなり迷いましたが、ここはやはり一番人気の角煮をお願いすることにしました。
店主のおすすめ「もちぶた角煮定食」を徹底取材せよ!
「すごい! お刺身付いてますよ!」
和豚もちぶたを使った「もちぶた角煮定食」は、刺身と茶碗蒸し付き!
「ご飯は十六穀米です」
ヘルシーですね~。彩りもきれいです。
「お肉がツヤツヤ! おいしそう~!」
「やわらかいですね~。お箸できれいに切れますよ」
「煮るときは、最初は味付けしないで3時間くらい煮るんです。
それから味付けして1時間煮ます。
そうするとやわらかくなるし、味もしみるんです」
何でもコツがあるもんです・・・。
さっそく、「いただきま~す!」
「この角煮の厚み!」
食べる前から大騒ぎです。
店主おすすめの脂身もしっかり入って、肉と層になっています。
おいしいものを食べると、まずは無口になります。
「・・・The和食ですね」
「The和食ですよ・・・」
これぞ和食!という、和食特有の繊細な甘みで、和豚もちぶたの肉の旨味が突出していないのに引き立ち、丸みのある味がします。
「やさしい味ですね~」
脂がさらっと口の中で溶けます。まったくしつこさがありません。
「確かに、この倍くらい脂身が付いていても大丈夫ですよ」
十六穀米との相性も抜群。
「十六穀米って固めに炊いてあることが多いですけど、こちらは柔らかめですね。白米みたい」
「年配の方も無理なく食べられるでしょうね」
「これはみんな和豚もちぶたのファンになりますよ」
「お~いしいなあ~」
記者Oさんの分まで食べちゃいました。すみません・・・
続いては味噌汁。
「赤出汁ですよ」
「赤味噌にしては辛くないですね」
「白味噌も入れてます。赤味噌が苦手な方もいらっしゃるので」
「だからですか(納得)」
「Tさん、このかんぴょうの厚み!」
「すごい! 初めて見ました!」
「戻し方にコツがあるんですよ。上手に戻すと、ふっくら厚みが出るんです」
まるで冬瓜のような瑞々しさとやわらかさ。こんな食感のかんぴょうは初めて食べました。
随所に手をかけた跡がうかがえます。じっくりゆっくり味わって食べないともったいない!
と言いつつ、お刺身へ。
「和食のお造りは白身が多いんですが、栃木ではまずマグロ!
とおっしゃるお客様が多いんです。マグロの消費量が日本一だそうですよ」
「ほんとですか!?」
確か、回転寿司の数も多かったですよね、
宇都宮・・・。海への憧れでしょうか。
「今日はマグロ、ヒラメ、甘エビとホタテです」
「おいしい~」
マグロの濃い赤身がとにかくきれいです。
和豚もちぶたとお刺身と両方食べられるなんて、なんて贅沢な定食。
「茶碗蒸しもなめらかで」
「幸せ~(^u^)」
あっという間に完食。ごちそうさまでした。
ちょっとしたお食事会に。うれしい送迎バスのサービスも
旬香さんは、テーブル席の他にカウンターと御座敷もあり、最大で80人くらいは入れるそうです。
「10名以上でコースを頼んでいただければ、バスで送迎もします」
とのことで、駅や会社などに集合して食事のときなども便利です。