~ プロローグ ~
「急に寒くなりましたね~」
背中の丸まった記者Tに、記者Oさんから温かい指令が届きました。
「では今月はラーメン屋さんに行きましょう」
「いいですね! あったかいものを食べると、心まであったかくなりますよね」
「キング餃子が有名なお店です。かなり大きいらしいですよ」
「大きい・・・?」
「八角の香りがするそうです」
「スパイシーなんですかね」
想像が膨らむキング餃子。
和豚もちぶたグルメリポート第11回は、彩花さんからお届けします。
道の駅うつのみや ろまんちっく村近くの口コミ人気ラーメン店
宇都宮市内から国道293を北上、国本西小学校方面との分れ道を左へ進むと、「彩花」があります。
お店の看板にも「キング餃子」の文字が。期待が膨らみます。
「お邪魔しま~す」
中に入ると、背中合わせのカウンター席、テーブル席と、小上がりがあります。
カウンター席の前の壁に、サイン色紙が飾ってありました。
まだお昼の客様がいらっしゃったこともあり、先に試食させていただきました。
「こちらのお店の和豚もちぶたメニューはなんですか?」
「キング餃子とチャーシューです。」
そこで、キング餃子3個入りと、チャーシュー麺をお願いしました。
待っている間に、店員さんが、餃子の調味料の説明をしてくれました。
「醤油と酢と、これはラー油ですけど、自家製なの。辛子とゴマ油でラー油を作って、沈んだのがこっち」
「ラー油の残り?」
記者Oさんが早速皿に取って、味見しています。
「ゴマの香りがすごいですね。意外に辛くないですよ」
「ほんとだ。辛いの苦手ですけど、これは大丈夫ですね。ゴマ味噌みたい」
「ラーメンに入れるお客さんもいるんですよ」
「これだけゴマの香りがしたら、坦々麺みたいになるかもしれないですね」
「王」の名に恥じない餃子は質も量も圧巻!~キング餃子~
その間に、キング餃子ができあがりました。
「うわっ、でかっ!」
長さ約10㎝、幅約3㎝。巨大な餃子がどどどん!と登場しました。
「これはでかいと言われるわけだ・・・」
「これ、羽根じゃないんですよね。皮ですよね」
つやつやもっちりしたこの存在感。まずは遠目で眺めて大きさを堪能してから、割ってみました。
「具が大きいですね。ざくっと切ってある感じ」
「食べてみますか」
見た目に違わぬボリュームのある食べ応え。厚手でもっちりした皮を噛みちぎった後の、キャベツとハクサイのしゃきしゃきした食感とのギャップを、和豚もちぶたのさらっとした脂がまとめています。肉のうまみと、さわやかな八角の香りもよく合います。
「ボリュームはありますけど、重くないですね」
「3個入り頼みましたけど、5個でもいけるんじゃないですか」
「ブログなんかで『八角の香りがする』と書いてる方が多かったので、もっと香りが強いかと思ってましたけど、ほんのりですね。ニンニクの臭いもしませんけど、入ってないのかな」
「このままでもおいしいですね」
「あっ、ラー油、ラー油!」
軽く味付けがしてあり、そのままでも十分おいしかったので、
うっかりせっかくの調味料を使わずに完食するところでした。
「うん」
「これはおいしいわ~♪」
記者二人、一瞬でゴマ調味料のファンになりました。
すっきりしたラー油に混ぜてよし、これだけ載せてもよし。ゴマの香りが食欲をそそります。
「このラー油、ギトギトしてなくて、さらっとしてますね。舌に刺さるような辛味もないし」
「ラーメンでも試してみたいですね」
パワフルな見た目と味わいの繊細さが好対照~チャーシュー麺~
そこへタイミングよく、チャーシュー麺が届きました。
「お待たせしました」
「おおっ!!」
目の前に置かれたどんぶりに、思わず声が上がりました。
「チャーシューが・・・はみ出してる!」
しかしさすが記者Oさん、記者Tとは違うところを見ていました。
「この肉と脂の見た目のバランスは好きですね」
脂が偏らずに肉の間に入りこんで、確かに見た目のバランスがいいチャーシューです。
「冷めないうちにいただきましょう」
「麺が太い縮れ麺だから、スープももっと濃厚なのかと思ってました」
「昔ながらの醤油味かと思うと、醤油の味ばかり強いわけでなく、口当たりのやわらかい、あっさりしたスープですね」
「このダシ、鶏と豚ですよね。和豚もちぶたって、鶏のダシと相性いいんですかね。このチャーシューとスープがまたよく馴染んで」
「これ以上チャーシューが厚かったら、ちょっと肉が強くなりすぎるかもしれないですね」
香りはまろやか、控え目なスープですが、和豚もちぶたの肉そのものの味を引き立てる、名脇役のようなスープです。
お店の看板にも書かれる手打ちの太い縮れ麺は、
表面がつるんとして、はっきりと麺の香りがわかります。
こってりしたスープのお店でよく見かけるタイプの麺ですが、あっさりしたスープもよく絡みます。それでいて主張が強すぎないのが不思議です。
「それにしても、麺の量が多くないですか」
「そんな気はしますね。でももうだいぶ食べちゃってますけど・・・」
半分ほど食べたところで、先程のゴマ調味料を入れてみました。
「香りがいいですね~。風味が変わって、二度楽しめますね」
ちょうどお客様が一段落ついたところで、店長の佐々木弘美さんに解説をお願いしました。
余すところなくすべてを使う「和豚もちぶた」への絶対の信頼
「このタイプの麺は、どろっとした感じのスープに入ってることが多いと思っていたのですが、
彩花さんではどうしてあっさりスープにこの麺を合わせたんですか?」
「昔、一品香さんで仕事してたからです。あの麺がいいと思っているので、
自分で店を出す時もこれにしました。
餃子に八角を入れたのも、その影響ですね」
「餃子もラーメンも、それぞれの素材が強く主張し合ってはいませんね。
ほんのりと、でも確実に使っていると素材感がわかります」
「飽きのこない味だって、週に3日いらっしゃるお客さまもいます。
ただ、毎日仕込みをしてると、鼻が慣れちゃって香りがわからなくなってね。
強くしないように気をつけてます」
「餃子にニンニク入ってませんよね?」
「入ってます」
あれ~?
「少ししか入れてないですけどね。お昼に食べるお客さんもいますから。
お昼に食べても気にならないとは言われます」
「和豚もちぶたを使うようになったきっかけを教えてください」
「飛び込みで営業に来てくれたのが最初だと思います。
ここで店を始めて7年くらいになるんですが、その前は清住で店をやってました。
その頃から使ってはいましたが、全部和豚もちぶたにしたのは、こっちに移ってからですね」
「使ってみて、いかがですか?」
「まずね、生の状態で、ハリやツヤが違う。ちょっとたるむなんてことは絶対ないからね。
調理して臭くないとか、脂がさっぱりしてるというのはもちろん。
あと面白いのはね、たまに肉の業者さんが営業に来ることもあるんだけど、
『和豚もちぶた使ってる』って言うと、『ああ、そうですか。じゃあ・・・』って帰っちゃうんだよ」
和豚もちぶたの実力は、業界内にも知れ渡ってるということなんでしょうか。
「こちらのチャーシューや餃子には、どの部位を使っていらっしゃいますか」
「主にロースだけど、うちは、腕を丸ごと1本買ってるんだ。
解体は関口さんにお願いしてるけど、そこで出たものは丸ごと全部余すところなく使ってる。
骨でスープ取ってるし、脂も使ってるし。
ああ、いいもの見せてあげようか」
調理場に戻って行く店長さん。何を見せてくれるのかと思いきや、
「わあぁ!」
チャーシューの塊がトレイに山盛り!
「これだけ作っても1日でなくなっちゃうから、うちはほぼ毎日作ってるけどね。照りといい、いい肉でしょ」
このチャーシュー、お持ち帰りもできるし、メニューにおつまみチャーシューもあるのです。あのゴマ調味料をつけたら、お酒が進みそうですね~。
「きれいに食べちゃった後でなんですが、こちらのラーメンはボリュームありますよね」
「一般的なお店だと、麺が150gくらいだと思いますけど、うちは普通盛で200gありますからね。大盛りは300g。器も大きいので出しますよ」
ほんとに量多かったんですね。
と言いながら・・・今日も完食!
調理場では厳しいお顔の店長さんですが、笑うと優しい雰囲気でした。