~ プロローグ ~
10月半ば。記者Oさんから指令が入りました。
「今回は花みずきさんにうかがいます」
「花みずきさんですか!?」
記者T、すでに浮かれています。
「1回目のグルメリポートのお店ですよね。
あのとんかつ、色といい厚みといい、おいしそうだな~と思ってたんですよ」
「記者Tは初めてですね。今回のメニューはしゃぶしゃぶです」
「いいですね~。寒くなってきましたもんね」
「これからの季節にぴったりですよ」
和豚もちぶたグルメリポート第9回は、「とんかつ・しゃぶしゃぶの店 花みずき」さんからお届けします。
いつ来ても居心地のよい、おしゃれなとんかつ屋さん
JR岡本駅から歩いて約5分。
前回のリポートで、 とんかつ屋さんとは思えぬすてきなお店とうかがっていましたが、中に入ってびっくり。
「ほんとにカフェみたいですね」
高い天井、広い空間。お店に入って最初に目に飛び込んでくるのは、6人がけのテーブル席と、カウンター4席。
テーブル席は8人座れるところを6席に抑え、カウンターも通常より奥行きのあるものを使い、とてもゆったりしています。
「もともとはビジネスホテルだったんですけど、コストも手間も大変でしょう。建物が古くなって、建て直すかどうするかとなったときに、食べ物屋にしようってことになったんです」
「かわいい~! ぶたさんグッズがいっぱい!店内のここにもそこにも、ぶたさんグッズが置いてあります。
「かわいい~! ぶたさんグッズがいっぱい!
店内のここにもそこにも、ぶたさんグッズが置いてあります。
「店長さんが集めたんですか?」
「いえ、お客様が持ってきてくれるんですよ。旅行のお土産とか、お店で見つけたとか」
「こんなにファンシーな雰囲気だと、男性のお客様が居心地悪くなりませんか?」
「うちはお客様の8割が女性なんです」
えっ!? とんかつ屋さんなのに!?
「仕事帰りのサラリーマンが多いかと思ってました」
「ランチタイムのほうが混むんですよ。
ママ友の食事会とか、女性の団体さんでちょっとした会合とか、
改まった会議というより、もっと気軽な雰囲気の集まりに使っていただくことが多いんです」
「そうですか。お店が広いですし、貸切にしたら開放感あるでしょうね」
「いえいえ、奥に個室もあるんですよ」
「えっ!?」
入口からではまったくわからない奥の個室スペース。
テーブル席と座敷がありますが、どちらもゆっくり落ち着けそうな・・・
「お昼前にいらして、ランチタイム終了までいらっしゃるお客様も多いですよ)。完全に2回転はしないですね」
(ランチタイムは11時半~14時半)
わかります~。まったりしちゃって、動きたくなくなります・・・。
探検気分であちこちのぞいていると、
店長さんからお声がかかりました。
「しゃぶしゃぶの準備ができてますから、どうぞ。
お肉が乾いちゃいますからね」
は~い! いただきます!
冬の人気メニュー「しゃぶしゃぶ」は2WAYで楽しむ!
冬の人気メニュー、しゃぶしゃぶ。写真は2人前です。
寒くなってくると、お客様のほとんどが注文するんだそうです。
「2色鍋ですよ」
「白いほうは豆乳ですか?」
「そうです。近くの『大豆の館』という豆腐屋さんで、国産大豆の豆乳を買ってます。そのまま豆腐が作れるほど濃い豆乳なので、湯葉が作れますよ」
「湯葉ですか!」
早速着火。沸くのを待ちます。
油断すると豆乳が沸騰して吹きこぼれますので(←もちろん記者Tがやりました)、火加減は控え目に。
「透明なほうはダシですか?」
「かつおとこんぶの白ダシに、うすくちしょうゆがちょっと。あとは、ヒアルロン酸のゼリーが入ってます」
「ヒアルロン酸!?」
鍋をのぞきこんでいた記者二人の目が、きら~んと光ります。
「もともと透明ですからわかりにくいですけどね。温めると溶けちゃいますし」
あああすでに着火しちゃいました~!
「味も匂いも特にありません」
・・・後日、自分の肌具合で確認します・・・。
「火が通りにくいので、先に野菜を入れてくださいね」
野菜はえのき、しめじ、水菜、白菜。〆にうどんがついてきます。
「あっ!」
「どうしたの、記者T」
「湯葉食べる前に、野菜入れちゃいました~」
「野菜にからめて食べてもおいしいですから」
店長さんになだめられ、野菜と湯葉で豆乳鍋からまず一口。
「ほんとに濃いですね」
「みなさん、ほとんど豆乳のほうは残さないですね。中には、どうやって食べたんだろうと思うほどきれいに召し上がる方もいらっしゃいますし」
「ダシの追加はできますか?」
「無料です」
単品でライスが注文できるので、軽く塩コショウで、
リゾット風の〆にするお客様もいらっしゃるそうです。
「いよいよお肉! 行きましょう!」
お肉を取ると、通常の長さに見えて、二つ折りになっていました。
「もしかして、これで1枚ですか?」
「そうなんですよ」
「普通、しゃぶしゃぶのお肉って、この半分くらいの長さでは?」
「最初にこのメニューを作ったとき、関口さんが『長さ半分でいいんじゃないか』って言ったんですけどね。食べ比べると、赤身と脂のバランスが、こちらのほうが断然いいんです。だから、うちはこの長さでお出ししています」
花みずきさんのしゃぶしゃぶは、お肉はロースとバラの2種類。ここにも店長の思い入れがありました。
「赤身と脂のバランスということでは、肉の部位もね。ロースも、いわゆる肩ロースではなくて、もうちょっと真ん中のほうを使ってます。肩より脂の割合が少なめで、さっぱり食べられるので」
お肉がちょっと白くなったら食べごろです。
つけだれは、おろしポン酢とごまだれの2種類用意されています。
「どちらで食べたほうがいいか、よく聞かれますが、どちらも合いますので、試してみてください」
言われて記者T、豆乳からごまだれに挑戦しました。
「わっ、辛っ!」
とろっとした甘めのごまだれを想像していた記者Tには、ちょっと刺激が強かった。辛口の味噌ラーメンのような辛味がありました。
「味噌入ってますか?」
「入ってません」
あれ~?
「豆板醤を使ってます」
ぴり辛の元はそれですか。
濃厚でしっかりした味のごまだれですが、お肉の味を殺しません。
野菜を巻いて食べても、お肉、野菜、それぞれの味がわかりながら、さらに味を引き立ててくれます。
「白だしも不思議ですよ」
見た目は色もなく、なめてもほとんど味を感じませんが、お肉をくぐらせるとうまみが増します。
「白だしはポン酢でさっぱりと思いましたけど、ごまだれもいいですね」
「記者T。〆のうどんをつくるから、具はちょっと残して」
危ない! きれいさっぱり食べ尽くすところでした。
さらに。あまりにおいしかったので、しゃぶしゃぶのアレをしていないことに、記者2人はまだ気付いていませんでした。
花みずきをとりまく人々の絆
「しゃぶしゃぶは夜限定ですか」
「手間がかかるので、ランチタイムには出せないんですよ。
あらかじめ予約していただけば、お出しすることもできますが」
「お肉はこちらでスライスしてらっしゃるんですか?」
「関口のところで、フレッシュな状態で切ってもらっています」
「関口さんとはお親しいんですか?」
「同級生なんです」
関口さんと店長・山市英樹さんは高校の同級生。
「『俺のとこにはいい肉よこせ』って、いつも言ってます(笑)」
関口肉店さんと取引先の方って、フレンドリーな方が多いですよね。
それもおいしいお肉の秘訣なのかも。
「今召し上がっていて、灰汁が出ていないでしょう」
そういえば!
いつもの「灰汁取り」を一度もしていませんでした!!!
「今まで、灰汁が出ると言われたことはほとんどありません」
しっかりした、いい肉の実力を目の当たりにした記者二人は、
一度も灰汁をすくうことなく、〆のうどんまで完食しました。
今度はぜひ、〆はリゾットで!
「そういえば店長さん、ずっと気になっていたんですが、この版画。棟方志功みたいですね」
店内のいたるところに飾られた、大きな仏様の版画が、ずっと記者Tは気になっていました。
おしゃれな店内に、まったく違和感なく飾られているのです。
「父の趣味なんです」
どなたかプロの作品だと思ってました!
「版画の会とか入ってらっしゃるんですか」
「独学なんですよ。その前は油絵もやってました」
カウンター席の後ろに飾られた大きな油絵も、お父様の作品だそうです。
「お客様に欲しいって言われることもあるんですが、『そんなんじゃないから』って売らないんですよ」
ちょっとお店が空いた時間に、彫って刷って楽しんでいらっしゃるそうです。すてきですね。。
おまけ
花みずきさんから歩いてすぐ。
国産豆乳も売っている豆腐屋さん「大豆の館」。
取材当日はお休みでした・・・