今年度お送りしてきたレシピで世界をめぐる旅、最終回では日本に戻ってきました。
帰り着くまでが旅行なのです(笑)
日本の豚肉料理の花形沖縄料理の魅力とは?
今回は、日本の中でも豚肉料理の聖地とも言うべき、沖縄料理を取り上げます。
独自の歴史と文化を持つ沖縄地方の代表的な料理「ソーキそば」をイメージした「和豚もちぶたのソーキそば風」をご紹介します。
周辺国との交易で栄えた琉球王国時代、薩摩藩に支配された江戸時代、明治政府により沖縄県となった近代、太平洋戦争による打撃からアメリカ統治時代、そして日本への復帰。
日本の中でも特別な経験を経てきた沖縄で、それでも脈々と受け継がれてきた伝統的な食文化は、明治以降、徐々に庶民にも伝わっていきました。
付近を黒潮が流れる沖縄では、一年を通して暖かく亜熱帯海洋性気候のエリアに属します。
とはいえ、本土とは異なる土壌や台風など、島しょ部の厳しい自然環境のもと生み出された独自の調理法は、じつは中国の食に対する「医食同源」の考えを受け継いでいます。
おいしいものは命の薬。食事は人の体を守るもの、という意味のウチナーグチ(沖縄方言)「ヌチグスイ」の精神は、今でも受け継がれているのです。
沖縄そばの麺の原料は小麦粉で、形状は島・地域によりさまざまですが細いきしめんのような平麺が主流。
うどんやそうめんとは異なり「かんすい」を使います。以前は沖縄地方に自生するガジュマルなどの樹木を燃やした灰を水に溶かし上澄みを使う方法が主流でした。
この麺を、主に鰹節や昆布・豚骨のダシをきかせた澄んだスープでいただきます。
「ソーキそば」「沖縄そば」では、豚のスペアリブや三枚肉の煮込みを、醤油と黒糖でやわらかく煮込んだものがトッピングされます。
ちなみに沖縄の三大豚肉料理と言われるのが「ソーキ(スペアリブ)」「ラフテー(三枚肉の角煮)」「テビチ(豚足の煮込み)」。
沖縄料理では、炊き込みご飯に豚肉を入れることもあり、豚肉の存在感が大きいのが特徴的ですね。厳密に言うと「ソーキそば」は骨付きスペアリブを乗せたものをいい、それ以外は「沖縄そば」と呼ぶそうです。
今回用意したのは和豚もちぶたのバラ肉(三枚肉)なので、本来ならば「沖縄そば」のカテゴリーに入るのですが、どうしても「ソーキそば」という圧倒的な語感の良さが捨てきれなかったスタッフ。あえて「和豚もちぶたの沖縄ソーキそば風」というタイトルにすることに決定(^^♪
というわけで今回は、日本の豚肉料理の花形とも言える沖縄料理で、和豚もちぶたの味を堪能します。
準備豚肉の旨味を最大限に活用する
今回先生にご紹介いただくのは、スタンダードなバージョンと、野菜をたっぷりバージョンの2種類。共通で使うスープは2人分、これに対してお肉は4人分、贅沢です!
お肉の下茹で
用意したのは和豚もちぶたバラ肉ブロック(写真は500g)。豚肉の角煮を作る場合はお肉の表面を焼くことも多いのですが、今回は表面を焼かず、トロッとした食感に仕上げていきます。
鍋にたっぷりの水を入れ、香味野菜の九条ネギとしょうがを投入します。
しょうがは大きな包丁などでたたいてつぶすと旨味がでます。
この状態で沸騰させたら、中火で1時間加熱します。1時間は長く感じますが、途中火加減は調整しなくていいので、手間的にはラクですね。
1時間加熱し終わったら、そのまま冷まして時間をおきます。
時間がたって表面に浮いてきた真っ白い脂を取り除きます。
本当はこれが和豚もちぶたの絶品ラード。取っておいて、何かに使いたいところですね^^
脂を取り除いた茹で汁を、ペーパータオルなどで濾しておきます。
ちなみに汁や油を濾す場合のペーパータオルは不織布タイプがおすすめ。
紙タイプのキッチンペーパーでも濾すことは可能ですが、不織布よりも目が細かくうまく通らないこともあるのです。
ここに和風だしと中華スープの素を加えておきます。
この茹で汁およそ3カップ分をとりわけ塩・醤油を加えてシンプルに味付けし、2人分のそばのスープを作っていきます。
残りの茹で汁も後で使うのでとっておいて下さいね。
調理地元ならではの素材が生み出す奥深い味
豚肉を泡盛と黒砂糖で味付け
茹で上がったバラ肉ブロックを切り分けていきます。包丁を入れると、中はほんのりピンク色!普通のチャーシューのように食べやすい厚さ(3mm程度)でもよいのですが・・・
今回語感のよさで「ソーキそば風」を名乗ったからには、お肉にはどうしても存在感が必要!今回は、お肉の縦方向に沿って、ど~んと分厚く切ってみました!
お肉の煮汁は、少量の水と和風だし、それに泡盛と黒砂糖、醤油。
フライパンに火を入れて煮汁を加熱したら、スライスした肉を投入。
角煮のように最初から味付けするとお肉が固くなりがちですが、下茹でしておいて食べる直前に味付けすると、お肉がやわらかく仕上がるのです。
加熱していくと、日本酒と明らかに違う、何ともいい香りが広がります!これが琉球泡盛の香りなのですね。
地元でできる酒を使った料理が多いのは、世界共通。沖縄地方では、うるち米ではなくインディカ米を使った泡盛が古くから作られてきたとか。
交易で栄えていた琉球王国では、シャム王国(現在のタイ)など東南アジアからはいってくるインディカ種が、身近なお米だったのですね。
絶妙な照りも出て、甘辛味のバラ肉が美味しそうに煮上がりました。
二つの沖縄そば
そばを茹でる前に、ここで2種類のトッピングを準備しておきましょう。
スタンダードバージョンのトッピングはとてもシンプルです。かまぼこ(またはさつま揚げでもOK)はお好みの薄切りに、青ネギは小口切りにします。彩りには紅ショウガも準備。
野菜たっぷりバージョンでは、キャベツ・ニンジン・ねぎ・青菜などたっぷりの野菜を準備。今回はパクチーも用意してみました。
野菜は、あらかじめ炒めてもいいのですが、お肉が柔らかく仕上がっているので、野菜も口当たりよく仕上げたいところ。
和豚もちぶたの旨味がたっぷりの茹で汁を使って、軽く茹でておきましょう。
つづいて沖縄そばを茹でます。沖縄そばはメーカーによって太さも茹で時間もさまざまなので、パッケージの表示どおりに茹であげてください。
茹であがった麺をどんぶりに入れたら、茹で汁から作ったスープを注ぎます。
盛り付け
沖縄そばとスープを入れたどんぶりに、それぞれトッピングを乗せていきます。
スタンダードバージョンのトッピングはシンプル。
ここに思い切って大きく切った甘辛味のバラ肉をど~んと乗せます。
紅ショウガを加えると、見慣れた沖縄そばの風情。
野菜たっぷりバージョンは、茹でた野菜をたっぷり乗せ、こちらも主役となるバラ肉をどーんと乗せます。色鮮やかな糸唐辛子と生のパクチーも添えてみました!
試食豚肉料理の本場・沖縄の料理を味わう
試食
2種類の「沖縄ソーキそば風」完成です!
分厚い甘辛バラ肉は、骨付き肉に勝るとも劣らないほどの存在感。澄んだ優しい味のスープにもよく合います。
そして、あえて「ソーキそば風」を名乗っただけあって、まさに豚肉が主役!口にするとふんわりと柔らかく、脂身の甘みを感じます。普通の角煮とどことなく違うまろやかな香りは、やはり泡盛と黒砂糖のおかげでしょうか。
スタンダードバージョンでは、スープの味とお肉の甘辛味・ネギの風味がマッチして、どこかほっとする味わい。いくらでも食べられそうです。関東人の味覚からすると、関西風うどんのようでもあり、ラーメンのようでもあり・・はじめて沖縄そばを食べたときの感動がよみがえりました^^
野菜たっぷりバージョン
野菜たっぷりバージョンは、いつも見慣れた沖縄そばのビジュアルとは全く異なるもの。
茹でただけの野菜も、水っぽさはなくスープと一体となって、シャキシャキとした歯ごたえで食欲をそそります。
何といっても特徴的なのは、パクチーの風味。どことなくベトナムのフォーを思わせる、エキゾチックな一品になりました。
さらに一品「沖縄風豚丼」
ここで、どこからともなく「やっぱり丼も必要でしょ」という声が・・・。
というわけで、お皿に盛ったご飯にスタンダードバージョンのトッピングを乗せると、「沖縄風豚丼」の完成!
調べてみると、やはり同じようなメニューを出すお店が沖縄にもあるようです。
味わいはそのまま、ボリュームのある豚丼は「あり」なのでした!(^^)!
さて、2021年度の黄金のレシピは、1年かけて世界のさまざまな伝統料理やレシピを取り上げてきました。いかがだったでしょうか?
世界には、本当に多彩な料理が存在していることに、改めて驚かされます。他のどこでもなく、その土地だからこそ生まれ得た味、そんな奥深い理由が必ずあるのも興味深いところ。
時代が変わって日々の食事が様変わりしても、おいしいものはちゃんと受け継がれていくのだな、そんな思いを新たにしました。
なかなか移動もままならない昨今、ほんの少しでも皆さまの食のイメージが広がるお手伝いができたなら幸いです。
分量のおさらい
和豚もちぶたの沖縄ソーキそば風(2人分)
- 沖縄そば・・・・・・・・・・・・2玉
- 豚バラブロック・・・・・・・・・250g
- 和風だしの素・・・・・・・・・・小さじ1
- 中華スープの素・・・・・・・・・小さじ1/2
- かまぼこ・青ネギ・紅ショウガ・・適量
A (スープ用調味料)
- 豚肉の茹で汁・・・・・・・・・・3カップ
- 塩・・・・・・・・・小さじ1/4
- 醤油・・・・・・・・小さじ1/2
B (煮汁用調味料)
- 水・・・・・・・・・大さじ3
- 和風だし・・・・・・小さじ1/6
- 泡盛・・・・・・・・大さじ1/2
- 黒砂糖・・・・・・・大さじ1/2
- 醤油・・・・・・・・大さじ1/2
野菜たっぷりバージョン
- 豚肉の茹で汁・・・・適量
- キャベツ・ニンジン・青ネギ・青菜・パクチー・糸唐辛子(お好みで)