レシピで世界を巡る旅。
今回は日本から海を渡ってすぐの中国南部と台湾を旅します。
東アジアのお米文化
この地域を旅するとき、一番ほっとするのは「お米がある」ということではないでしょうか。
最近は日本でもパン食派が増えたとはいえ、まだまだこの国の主食は、やっぱり「お米」。同様に、中国南部から東南アジアの稲作地域でも、食の中心はお米なのです。
日本のように白米としてそのまま食べる料理もあれば、麺などに加工したりさまざまな味付けをして食べる料理も非常に多く、その食べ方は多種多様です。
中国南部発祥のお米の麺
今回一つ目にご紹介するのは、お米から作った「ライスヌードル」のレシピ。ライスヌードルは、東アジア・東南アジアを中心に広い地域で食べられており、その形や食べ方も多岐にわたります。
ベトナムの「フォー」、インドネシアの「ミーフン」、カンボジアの「クイティウ」、ミャンマー(ビルマ料理)の「モヒンガー」などなど。
中国のお米の麺「ビーフン」の発祥は古く、紀元前220年頃の中国南部・福建省周辺と言われています。
料理法も使う食材もさまざまですが、日本人にもっともなじみが深いのは、戦後いち早く伝わった「焼きビーフン」ではないでしょうか。乾燥したビーフンを軽くゆでるか湯につけてもどし、豚肉や野菜・魚介などと炒めて食べます。
台湾屋台グルメ
もうひとつのレシピは、白米におかずを乗せて食べる「丼もの」スタイルの台湾料理です。
台湾では、海を挟んで向かい側の中国・福建省や広東省ほか、中国各地から移住してきた人々の文化、統治時代の日本の文化などが複雑にミックスされ、独自の食文化が根付きました。
現在、台湾旅行で欠かせないグルメスポットが夜市(ナイトマーケット)です。日本統治時代に繁華街にできた夜市がその始まりとか。
多くの屋台が連なるナイトマーケットでは、食べ物だけでなく生活雑貨から機械・工具までさまざまなものが売られており、日常生活にも欠かせないショッピングスポットとなっています。
そして台湾屋台を訪れる観光客に人気のメニューが「ルーローハン」。漢字では「滷肉飯」「魯肉飯」と書きます。
豚バラ肉を玉ねぎや八角などと甘辛く煮て、煮汁ごとご飯にかけて食べる「角煮丼」のようなメニューです。現地では、丼もののように単品で供されることは少なく、あくまで「定食の中のご飯」といった位置付けになるようです。
というわけで今回は、お米と豚肉をおいしく食べる東アジアのレシピ「焼きビーフン」と「ルーローハン」をご紹介していきます。
野菜たっぷり!焼きビーフン
まずは、中国南部・福建省あたりにいったつもり^^
この地発祥とされる「焼きビーフン」を作っていきましょう。
使うのは、和豚もちぶたのバラ肉スライスと、キャベツ、ニンジンほか、ごくごく普通のお野菜たちと、そして乾燥したビーフン。
和豚もちぶたバラ肉スライスは一口大に。分量は2人分で60g程度ですが、主役なので少し多めに入れてみました^^
キャベツは約1cm幅で長めに切ります。ニンジンは細い短冊切り。ネギは斜め切り。にらは4~5cmに切ります。
野菜をすべて細長く切っていくのは、細い麺と炒めたときに大きさがそろい、食べやすくするためです。
ビーフンをもどす
口当たりよくおいしいビーフンを作るには、仕込みが大切なポイント。
まずビーフンを戻すときは、熱湯に入れたらすぐ火をとめて、「湯せん」の状態で1分置きます。
こうすることで柔らかくなりすぎず、炒めたときにパラパラの状態になるのです。
戻したビーフンをざるに取り、いったん水で冷やします。そうめんやうどんのように流水でよくぬめりを取ったら、ここでぎゅっと手で押さえて水気をよく切っておくのも重要なポイント。
水気を切ったビーフンをボウルに移したら、最後に大さじ1杯程度の油を回しかけ、よく絡めておきます。
以上の手順で、炒めてもべたつかない、さらっとしたビーフンを作ることができます。
ビーフンを炒める
まずは油を絡めたビーフンを、熱したフライパンで軽く炒めます。ここではまだ何の味もつけません。焦げ付きが心配な場合は、フライパンに薄く油をひいてもOKです。
ビーフンの表面が焼けてよくほぐれたら、再びボウルに取り出しておきます。
ビーフンを取り出したフライパンに大さじ1杯程度の油を引き、豚バラ肉を炒めていきます。
お肉に火が通ってきたら、軽く塩コショウをし、ニンジンを炒めます。
和豚もちぶたのバラ肉を炒めるときは、油はなるべく最小限に抑えたいところ。炒めていくうちに、旨味たっぷりの脂がお肉からたくさん出てきますよ^^
ニンジンに火が通ってきたら、キャベツとネギを投入。
固い食材から順に炒めていくと、全体にバランスよく火が通ります。
最後にニラを投入。お好みでピーマンでもOKです。
全体を炒め合わせたら、最後にビーフンを戻し、全体を手早く炒めたら、中華調味料としょうゆ・塩コショウで味付けします。
中華風の炒め物には、ラーメン屋さんで使う普通のテーブルコショー(白コショー)が最適。食材によくなじむのです。
今回使ったお醤油には「日光東照宮献上醤油」とありました。なんと葵の御紋つき!香ばしい高貴な香りが広がりました!
野菜にシャキシャキ感が残るうちに火をとめたら、焼きビーフンの出来上がりです。
つけあわせその1 チンゲンサイのオイスターソース炒め
チンゲンサイの芯の部分と葉の部分を切り分けておきます。※小さいチンゲンサイの場合は切り分けずそのまま料理してもOKです。
葉のほうはそのまま食べやすい大きさに切っておきます。
芯のほうは太いので、縦4つに切り分たら油を引いたフライパンで炒め、少し多めの塩をかけます。
フライパンに熱湯を多めに入れたら、蓋をして数分間蒸し焼きにして火を通します。
芯に火が通ったら、いったんざるにあけ湯を切ります。
フライパンに戻したら、葉も入れて炒めます。オイスターソースをかけ、葉に火が通ったら出来上がりです。
台湾の人気屋台グルメ「ルーローハン」
さて続いては、福建省と海を挟んで向かい側の台湾へ。
ルーローハンを作っていきましょう。
ルーローハンのおもな材料は、バラ肉と玉ねぎとスパイス「八角(スターアニス)」と「五香粉」。
八角は、台湾料理ではよく使われるスパイスですが、中国でも広く香りづけに用いられます。
また、ルーローハンではゆで卵を一緒に入れて煮込むのも定番です。
お肉は、ひき肉を使う場合もありますが、やはり切りわけたバラ肉を使うことが多いようです。
地域によっては、切り分けない角煮のまま出す場合もあるとか。
今回は、ブロックのバラ肉をすこし大き目の賽の目に切りわけておきます。
ワンポイントアドバイス
しょうが・にんにくをおろすときは、おろし金の上にホイルをかぶせた状態でおろすと、目詰まりせず無駄なく使えます。
旨味とトロミのモト 玉ねぎの「揚げ焼き」を作る
玉ねぎを縦に細く切り、ビニール袋に入れて小麦粉をまぶしておきます。
これをたっぷりの油で「揚げ焼き」の状態にして加熱します。これがルーローハンの旨味のポイント。少し焦げ目がつくくらいまで、じっくり加熱していきましょう。エスニック料理でよくつかわれる「フライドオニオン」のような甘い香りが立ってきます。
全体に焼き目が付いたら、フライパンから取り出しておき、煮込みの段階で加えます。これが最終的にはトロミのもとにもなるのです。
お肉を炒める
フライパンを熱してバラ肉を炒めます。肉の表面の色が変わってきたら、醤油・砂糖・酒・酢を入れます。
酒は、もしあれば紹興酒がおすすめ。
隠し味にお酢が入るところは中華料理的なポイントですね。
おろしたしょうが・にんにく、そして八角を投入したら水を加え、鍋にふたをして、まず中火で5分間煮込みます。
揚げ焼きした玉ねぎとゆで卵を加え、蓋をしてあらためて20分煮込みます。煮汁にトロミがついてきたら弱火にしましょう。
2段階に煮込む理由は、まず最初に調味料・香りをよく肉になじませて柔らかくし、その後でトロミをつけていきたいためです。
しっかりととろみがついてきたら、オイスターソースと五香粉を加えます。
じゅうぶん仕事をしてくれた八角は、この辺で取り除いておきましょう。
さらに5分間煮込んだら出来上がりです。
先生のご愛用品 上から分量がわかる計量カップ
計量カップに入れた分量を見るには、いったんカップを持ち上げて目盛りを見る必要がありますね。でもこれはカップの内側にも目盛りがついていて、そのまま視線を動かさず分量がわかります。とくに液状のものを計る時にはとっても便利♪
つけあわせその2 空心菜の塩炒め
空心菜は、アジア全般でいろいな味付けで食べられるポピュラーな青菜。今回はにんにくと塩で仕上げます。
まずはニンニクひとかけを薄いスライスにし、油で炒めます。
空心菜は食べやすい大きさに切り分け、根の部分から先に炒めはじめます。追って葉の部分を投入。紹興酒を少量ふりかけ、塩を加えて全体をよく炒めます。
香りづけにごま油をかけたら出来上がり!
試食お米の国の豚肉料理を味わう
鮮やかな緑の付け合わせとともに、中華料理と台湾料理をいただきます。
焼きビーフン
中華風のお皿に盛り付けられた焼きビーフンは、絶妙な炒め加減!お肉もお野菜もつやつや輝いています。一口食べて、まずビーフンの口当たりに驚きました!家でビーフンを作る時はどうしても全体がべったりと仕上がってしまい、「お米の麺だから仕方ないか」と諦めていたのですが・・・
先生の焼きビーフンは、上手にゆでたパスタのような、さらさらとした口当たり。それでいて、和豚もちぶたと野菜の旨味がよく絡んでいます。
思えばビーフンをゆでるところから、自分が思っていた手順とは全く異なっていました。先生の手順の一つ一つがこの味わいにつながるのか!と、スタッフは感動することしきりw。
野菜もシャキシャキ感が残り、炒めた分甘みも引き出されています。そこに和豚もちぶたバラ肉の濃厚な味が加わり「極上の炒め物」に仕上がっていました。
何の違和感もなくどんどん食べられてしまうのは、やはりアジアの味だからでしょうか。自分の家の食卓で食事をしているような、絶対的な安心感を感じます。
中華料理と日本料理とは、やはり兄弟のような存在なんだな、と思える一皿です。
ルーローハン
そして、白いご飯のうえで湯気をたてているルーローハン。一口食べると、気分は一気に台北のナイトマーケットへ!あでやかな八角の香りは、台湾屋台の軒先でゆれる灯りを思わせる、異国情緒そのものです。
それでいてしょうゆベースの甘辛い味付けは、日本人が最も好む味。これが白いご飯に載っているのですから、もう怖いものなしです(笑)
かみしめると、バラ肉の濃厚な味わいが八角の香りとともに口に広がり、いくらでもご飯が進みます。長崎しっぽく料理の「東坡煮」や沖縄の「ラフテー」とも似ていますが、見えてくる景色は別物。
付け合わせには、高菜をそえるのが定番。九州の豚骨ラーメンについてくる、あの高菜です。シルクロードを通じて平安時代には日本に伝えられていたとされる高菜は、塩漬けにして乳酸発酵させた伝統食品。八角の香りに高菜のほのかな酸味が加わると、どこか落ち着いた家庭的な味わいになります。
さらに煮玉子と一緒に食べると、無条件に幸せな風味に!
ビーフンを食べてまったりとなごんでいたスタッフのテンションは、一気に最高潮へ(笑)
つけあわせの空心菜の塩炒め・チンゲンサイのオイスター炒めは、シャキシャキと歯ごたえがあり、濃いめの味付けのルーローハンとも、焼きビーフンともよく合います。
どちらも青菜の炒め物には違いないのですが、水っぽさはなく、味わいに深みがあるのです。
たとえシンプルなレシピであっても、決して脇役に甘んじることなく、それぞれの料理にそれぞれの奥行きがあることに脱帽です。
中華料理も台湾料理も、限りなく日本に近く、それでいてどこか違う・・・。東・南へ数千キロの海路は、この絶妙な違いを生み出すのにちょうどいい距離だったようです。
世界はまだ少し息をひそめている、2021年夏。
それぞれの地で、いつかまたにぎやかな食卓が戻ってくることを願いつつ、東アジアお米文化圏の豚肉グルメをしっかり堪能することができました。
分量のおさらい
焼きビーフン(2人分)
写真では4~5人分で調理しています
- ビーフン・・・・・・・・・・100g
- 豚バラスライス・・・・・・・60g
- キャベツ・・・・・・・・・・2枚
- ニンジン・・・・・・・・・・1/4本
- にら・・・・・・・・・・・・1/2束
- 白ねぎ・・・・・・・・・・・約20cm分
- 粉末中華調味料・・・・・・・小さじ1
- 醤油・・・・・・・・・・・・小さじ1
- 塩コショウ・・・・・・・・・少々
- 米油(下ごしらえ用)・・・・・大さじ1
- 米油(炒め用)・・・・・・・・大さじ1
ルーローハン
写真では4~5人分で調理しています
- 豚バラ肉ブロック・・・・・・200g
- サラダ油・・・・・・・・・・大さじ1
- おろしニンニク・・・・・・小さじ1/4
- おろししょうが・・・・・・小さじ1/4
- 八角(スターアニス)・・・・1個
- 水・・・・・・・・・・・・250ml
- 醤油・・・・・・・・・・・大さじ1・1/2
- 砂糖・・・・・・・・・・・大さじ1・1/2
- 酒・・・・・・・・・・・・大さじ1(あれば老酒か紹興酒)
- 酢・・・・・・・・・・・・小さじ1
- 玉ねぎ・・・・・・・・・・1/2個
- 薄力粉・・・・・・・・・・大さじ1
- 砂糖・・・・・・・・・・・大さじ1・1/2
- サラダ油・・・・・・・・・大さじ3(揚げ焼き用)
- ゆで卵・・・・・・・・・・2個
- オイスターソース・・・・・大さじ1/2
- 五香粉(ウーシャンフェン)・小さじ1/4