2020年5月半ば。取材スタッフは、料理研究家・臼居芳美先生のご自宅を訪れました。
外は気持ちよく晴れて初夏の日差しにあふれていますが、
キッチンではマスク着用・窓解放、ソーシャルディスタンスに十分留意して、
キッチンに備えてある次亜塩素酸ナトリウムで手指を消毒したら、
いつものとおりに取材開始!
チャーシューとは?焼く「叉焼」と煮る「焼豚」
今回は和豚もちぶたのバラ肉で、ご家庭でも作れるチャーシューレシピをご紹介します。
日本でもなじみ深いチャーシューとは、本来はどんなメニューなのでしょうか。
漢字では「叉焼」とも「焼豚」とも書きますが、中国では「叉焼」のほうを使うようです。
中華料理でいう本来のチャーシューとは、専用のタレをつけて専用の炉や釜でじっくり焼き上げたもの。甘いタレを表面にかけてパリっと仕上げます。
地方によっては赤く色付けたタレを使う場合もあります。
中華街などで、店頭につるされている赤いチャーシューを見かけたことはありませんか?
じっくりと焼いて仕上げるので、お肉はしっかりとした歯ごたえがあります。五香粉などの香料を使うのも特徴的です。
いっぽう、日本のラーメン屋さんなどで出されるチャーシューは、ほとんどが「煮豚」に味をつけたもの。時間をかけてじっくり煮込むので、お肉は角煮のように柔らかく仕上がります。香料もあまりきつくない程度のものが多いですね。
和豚もちぶたファンの方の中には、ご家庭で中国風の本格チャーシューに挑戦される猛者もいらっしゃいます。でも時間をかけて焼き上げるぶん、ハードルはけっこう高めです。
そこで今回の黄金のレシピでは、おうちごはんでも気軽に作れる「煮豚」タイプのチャーシューレシピをご紹介します。
準備したバラ肉ブロックは600gに近い大きなかたまり。これを二つに切って使います。
1つのブロックが300g。ちょうど扱いやすい大きさです。
弱火でコトコト煮込むので、とくにタコ糸で縛ったりしなくても大丈夫です。
大まかな流れとしては、香味野菜と一緒に煮込んで煮豚を作ってから、フライパンで焼き目をつけ、そのあとタレに漬ける、という手順となります。
焼き目が付くので、角煮のようなとろとろお肉ではなく、表面に適度な歯ごたえがあるチャーシューになります。
豚肉を煮るまずはコトコト煮込んで柔らかく
たっぷりの水を入れた鍋に、ネギの青いところとショウガバラ肉ブロックを入れ、ごくごく弱火で1時間半煮込みます。水から煮込むところがポイントです。
沸騰したら、ペーパータオルで落としぶたをしておきます。ぐつぐつ煮立たないように注意しましょう。
1時間半たち、肉が煮あがったら鍋から取り出します。香味野菜で煮こんだバラ肉ブロックは、角煮のようにほろほろに柔らかくなっています。
あとからフライパンで焼くので、ペーパータオルで水気をとっておきます。
ちなみに、煮汁も旨味たっぷりのスープになります。お肉を取り出した後はしばらく冷ましておきましょう。
煮汁を捨てるときは
肉の脂を含む煮汁を熱いまま流しに捨ててしまうのは避けましょう。含まれている脂が固まり、パイプが詰まる原因になってしまいます。
焼き目をつける焼き感と歯ごたえを出す
煮あがったバラ肉に、フライパンで焼き目をつけていきます。こうすることで、焼き目にタレがよくしみ込んで、歯ごたえもよくなります。
フライパンを熱したら油を引かずに、まず脂身のほうを下にして焼き目をつけます。
焼いていくとすぐにサラサラの脂が出てくるところは、さすがに和豚もちぶた!この溶け出した脂を使って、全体に軽く焼き目をつけていきましょう。
ピチピチ、パチパチと脂がはねる音がキッチンいっぱいに響いたあと、キッチンには、いかにも「映え」そうなお肉のかたまりが出現しました♪
余分な脂って?
レシピにはよく「余分な脂をとる」という表現を見かけますね。どのくらいが「余分」というのかは、人さまざまなのでさておき・・
先生曰く、中国も西欧諸国も、調理に油をたくさん使うことにほとんど抵抗がないのに、日本では肉の脂は「健康に悪い」という先入観が根強く残っているといいます。
でも、お肉の脂はそもそも旨味の主役。体にとって大切な栄養もたっぷり含まれています。
お肉を調理するときには、脂すべてが「捨てるもの」「余分なもの」とは考えず、ぜひ脂もいっしょにおいしく味わってほしいとのこと。
そしてそのお肉が「和豚もちぶた」であればなおさらです^^
タレに漬ける辛いチャーシューと甘いチャーシュー
焼き目のついたお肉をタレに絡めていきます。今回作るタレは2種類。ひとつめはコチュジャンがベースの「辛みそダレ」。
「辛いチャーシュー」って、案外ありそうでない味ですね。
もうひとつはスタンダードな「甘ダレ」。こちらははちみつと醤油だけ。みりんや香辛料はとくに入れないので、お肉本来の味がよくわかる優しい甘辛風味です。
お好みで香辛料を加える
お好みの香辛料を加えたいときは、タレと一緒に加熱してください。例えば八角などを入れると、より中華らしい風味づけができます。
肉に焼き目をつけたフライパンをそのまま使い、タレの材料を入れていきます。
材料がふつふつしてきたら、焼き目を付けた肉を戻し、タレをよく絡めていきます。
全体にタレが絡んだらすぐフライパンから出し、タレと一緒に人肌程度になるまで冷まします。
この時点で食べてももちろんおいしいのですが、一晩おくと味がなじんでさらに深い味わいになります。
粗熱をとったら密封できる袋にお肉とフライパンに残っているタレを入れ、よく空気を抜いて冷蔵庫で冷します。
この状態で、長ければ1週間程度は保存可能です。
冷蔵保存の時の注意
冷蔵庫で保存するときは、袋の口のほうを上向きにしておきましょう。万が一、袋の口からタレが漏れてしまったときにも被害が少なくて済みますよ(^^ゞ
季節感いっぱいのアレンジチャーシューを味わう
一晩おいたチャーシューを袋から取り出すと、お肉にはタレがよくしみ込んで、汁気はあまりなくなっています。
はちみつ醤油を絡めた甘ダレタイプは、焼き目の部分にタレがしみ込み、みごとな照り具合!
さっそく切り分けていくと、周囲が茶色く色づいて、なんとも香ばしそうです。
辛みそのほうはタレをつけたまま切り分けましょう。周囲がコチュジャンで赤く色づき、お肉とのコントラストがきれいです。
辛みそタレが残っていたら一緒に添えておくと、食べるときにお好みで辛さを調整できます。
家呑みにうれしい「おつまみチャーシュー」白髪ねぎ添え
白髪ねぎを皿に盛り、チャーシューを食べやすい厚さに切り分けて並べアサツキを散らしたら、「おつまみチャーシュー」のできあがり。
はちみつ醤油のチャーシューは、ほんのり甘い香りが広がり、噛むほどにお肉の旨味がしっかりわかる、優しいおいしさです。
白髪ねぎの作り方
長ネギの白いところを細切りにし、バラバラにならないようにペーパータオルに包んで水の中で少しもみます。
バラバラにして水にさらすよりも形が整えやすく、盛り付けもきれいに決まりますよ^^
辛みそダレのチャーシューは、タレが付いているのは周辺だけなので辛すぎず、むしろお肉の甘みが際立つ味。
白髪ネギをチャーシューで巻いて食べるのもおすすめです。お肉の甘みとネギの香りが口いっぱいに広がります。
お酒もご飯も、どんどん進みそうなのでご注意を(^^)/
冷めてもおいしい「チャーシュー入りおこわ」
たっぷりの山菜を入れて作った先生お手製の山菜おこわに、角切りにした甘ダレのチャーシューを混ぜて「ちまき風おこわ」にしてみました。
ラップを広げた上に食べやすい量のおこわをのせ、茶巾のように絞ると、かわいらしい一品に。
包むときには、お肉は内側に入れておくのがポイント。食べるときにお肉がポロっとこぼれなくなります。
冷めてもおいしいのでお弁当にもおすすめです。ふっくらと炊き上げたおこわには、甘ダレのしみ込んだバラ肉の優しい風味がよく合います。
ラーメン屋さんの中華スープ
ここで、煮豚をつくったときの煮汁が再登場。
冷めると表面には驚くほどのラードが浮いてきます。
脂はもちろん和豚もちぶたの「とろける脂身」。
取り除いて上質なラードとして再利用するもよし、あるいは濃厚スープとしてそのまま味わうもよし。
香味野菜と脂を取り除いたら、中華スープの素を加え温め、刻みネギを散らすとおいしい中華スープのできあがり^^
バラ肉の旨味がしっかり溶け出して、深いコクが感じられます。
お好みで塩コショウ・醤油などを加えてください。
2つのタレのチャーシューで、さまざまなメニューができあがりました。先生のお宅の庭にある山椒の葉が、初夏らしいアクセントになっています。
キッチンではなく南の窓に面した、素敵なアンティークテーブルで撮った写真は、とても趣のあるショットに。
5月の日差しがやわらかく差し込み、食材本来の色や陰影が豊かに映り込みました。
いま世の中で起こっているあれこれが早く収まってくれるのを願いつつ、特別なひとときを過ごした取材となりました。
分量のおさらい
チャーシュー
- 豚バラ肉ブロック・・300g
辛みそダレ
- コチュジャン・・・・40g
- 味噌・・・・・・・・20g
- 酒・・・・・・・・・40ml
甘ダレ
- 醤油・・・・・・・・50ml
- はちみつ・・・・・・30g