残暑どころではない酷暑の9月上旬、先生のお宅にお邪魔しました。暑さから逃れるように玄関を入ると、お肉の香ばしさとハーブが混じりあった、何ともいえないいい香りが漂い、頭の中は一瞬にしてヨーロッパの街角へ(^^♪
今日のレシピは「豚肉のビール煮」。
元はベルギーの伝統料理「カルボナードフラマンド」という牛肉メニューですが、ベルギーでは豚肉を使う料理も比較的多いのだとか。
豚肉のビール煮①「ペールエール」で煮込むベルギー伝統料理
撮影用にすでに煮込みを終えた鍋を見せていただくと、ゴロッと大ぶりのお肉はよく火が通って柔らかそうです。
煮込みに使用する水分は「ビール」だけ。ビールの炭酸とアルコール分が、お肉を柔らかく仕上げてくれるのです。
ちなみにビールといっても様々な種類・製法があります。
今回使う「ペールエール」という種類は、どこかで聞いたことがあるけれど、どんなものかはまったく理解していないスタッフ。
「いろいろあるのよ~!」と先生がキッチンテーブルに並べてくれたのは、国内外さまざまなクラフトビールの缶。
「エール」はビールの種類(製法)のひとつ。「ペールエール」とは、直訳すれば淡い色のエールビール、となります。
そもそもビールは、その製法から大きく分けて「エール」と「ラガー」「自然発酵」とに分けられます。現在世界中で主流になっているラガービールは比較的歴史が新しいもの。これに対して「自然発酵」や「エール」は古くからあった製法だそうです。
古代ローマ時代からビール製造をしていたとされるクラフトビールの本場・ベルギーで「ビール煮」のレシピが生まれたのは、ごく自然ななりゆきだったのですね^^
さて、ビールのことで頭の中がいっぱいになる前に(笑)、いよいよ「豚肉のビール煮」を作っていきます。
豚肉のビール煮②焼き目の「メイラード反応」
ほれぼれするような色鮮やかな肩ロース500gのブロックを大きめにカットしていきます。
脂の層がついていたら、均等に含めるように切り分けていきましょう。
今回は煮込み料理なので、しっかりとコクのある「肩ロース」ブロックを切り分けるのがおすすめですが、ブロック肉はあまり店頭で販売していないかもしれません。切り売りしてくれる精肉店さんにお願いするとよいでしょう。
つづいて玉ねぎ・ベーコンを切っていきます。
お肉500gに対して中くらいの玉ねぎ1個。今回は大きめの角切りにしてみました。薄切りにしてもOKです。
スライスベーコンは2cm幅くらいに切っておきます。ブイヨンは入れないので、これがダシとなるのです。
食材はこれだけ。肉に下味はつけないので、食材本来の旨味をどう引き出すかが味の決め手となります。
よく熱した鍋にオリーブオイルをひき、お肉を重ならないように並べます。お肉に焼き目をつけてから煮込んでいくので、焦げ付かない厚手の鍋がおすすめです。
※先生の鉄則「お肉を焼き始めてすぐは絶対に動かさないこと」を実践しましょう!
表面がしっかり焼けると自然と動かせるようになりますよ^^
火加減は強めの中火。ただし、あまり火が弱すぎるとお肉の水分が出てきてしまうので注意しましょう。
お肉に限らず、食品の香ばしい焼き目のことを「メイラード反応」というのだそうです。
トーストやステーキの焼き目、ご飯のおこげ、コーヒー豆など、食物が褐色に変化するときに「香ばしさ・おいしさ」が生まれます。
そして焼き目が周りをカバーするので、食材を煮込む時も旨味が逃げることがありません。
今回はこのメイラード反応をお肉で起こしていきます。これでもかというくらいにしっかり焼き目をつけていきましょう。
お肉に十分焼き目がついたら、いったん鍋から取り出しておきます。
お肉を取り出した後の鍋で、切っておいた玉ねぎ・ベーコンを炒めていきます。
鍋に残った脂と焦げ付きは旨味たっぷりなので、玉ねぎ・ベーコンに残らず絡めてしまいましょう。
こびりついている部分があるときは、鍋をいったん濡れ布巾の上にのせて急速に冷やしてから、また火に戻します。
こうすることで焦げ付きが取れやすくなります。
焦げ付きが残ったまま煮込んでしまうと、そこがさらに焦げ付いてしまうので注意しましょう。
玉ねぎとベーコンに肉の脂と旨味が十分絡んできたら、鍋に肉を戻します。
このあといよいよ、ビールを注いで煮込んでいきます。
豚肉のビール煮③ビールを注ぎハーブで香りづけ
焼き目をつけたお肉を鍋に戻し、玉ねぎ・ベーコンと軽くまぜたら絡めたらビールを注ぎます。
500gのお肉なら、ビールは350ml缶1本分が適量。もちろん煮あがったときにビールの味は残りません。
つづいてキャトルエピスというミックススパイスを投入。これはヨーロッパ、とくにフランスでは一般的なミックススパイスで、シナモンかジンジャー・クローブ・ナツメグなどをブレンドしたものです。
さらに、フレッシュハーブ(ローリエ・マジョラム・ローズマリー)を投入。さっきまで先生宅のお庭に生えていたものです。
先生お手製の粒マスタードを細かくつぶしたもの、ブラウンシュガー(または三温糖)・薄力粉・バルサミコ酢・塩・胡椒も加えます。
ハーブやスパイス、多彩な調味料を使った、複雑な組み合わせの味つけです。見た目にも俄然ヨーロッパの煮込み料理っぽくなってきました(^^♪
付け合わせとして、フェットチーネを茹でておきます。茹で上がったらすぐオリーブオイルをまぶし塩も少々振っておきます。
マッシュポテトのバリエーションとして、フランス料理の付け合わせによく出される「アリゴ」も作ります。
ポテトと同量のチーズを入れよく混ぜ、全体に滑らかになればできあがり。伸びるチーズを混ぜて練り上げるため、まるでトルコアイスのように長~くのびるのが特徴です。
豚肉のビール煮③「お肉を食べてる感」満載の一皿
豚肉のビール煮をフェットチーネ・マッシュポテトと白いお皿に盛り付け、先生お手製の粒マスタードとキュウリのピクルスも添えました。
煮込んでいる間に先生がお庭から採ってきた、イタリアンパセリのグリーンも鮮やかです。
1~2時間煮込んだ和豚もちぶた肩ロース肉は、お箸で崩れるほどの柔らかさ。ハーブやベーコン・マスタード・バルサミコ酢など複雑な味の要素が見事に一つにまとまり、味がしっかり滲みていて、噛みしめるとお肉の旨味がしっかりと味わえます。
煮込む前にしっかりと焼き目をつけた「メイラード反応」のおかげでしょうか。
少しとろみある煮汁は付け合わせによく絡み、フェットチーネやマッシュポテトとの相性も抜群です。
ポテトと同量のチーズを混ぜた「アリゴ」はとてもリッチな味わいで、ハーブの効いたお肉と一緒に食べると、口の中に広がる風味がなんとも贅沢です。
旨味たっぷり・ゴロゴロお肉の存在感は圧倒的。「お肉を食べてる感」がしっかりある、大満足のメニューでした。
分量のおさらい
豚肉のビール煮
- 豚肉・・・・・・・・・・500g(肩ロース)
- 玉ねぎ・・・・・・・・・1個
- スライスベーコン・・・・50g
- エールビール・・・・・・350ml
- キャトルエピス・・・・・小さじ1 (なければ五香粉でも可)
- ローリエ、タイム・・・・適量
- ディジョンマスタード・・大さじ1/2 (なければ和辛子でも可)
- ブラウンシュガー・・・・大さじ1.5
- 薄力粉・・・・・・・・・大さじ1
- バルサミコ酢・・・・・・大さじ1.5
- 塩・・・・・・・・・・・小さじ1
- コショウ・・・・・・・・少々