桜の咲きそうな暖かい日と、厳冬の寒さが入り乱れた3月初旬の宇都宮、料理研究家・臼居芳美先生のお宅を訪れました。平成最後の「黄金のレシピ」にと臼居先生が選んでくれたのは、フランス料理伝統の保存食「リエット」。オードブルでよく出されるメニューで、ワインとよく合う料理です。
フランス料理伝統の保存食リエット
日本ではあまりなじみのないメニュー「リエット」は、フランスの伝統的な保存食。直訳すると「豚肉の塊」という意味です。小さくカットしたお肉を煮崩れるまでしっかり煮込み、容器に入れて保存します。パテやテリーヌとも似ていますが、本来パイ生地に包んで焼くのが「パテ」、テリーヌ型に入れて固めるのが「テリーヌ」。リエットは、そのまま小さめのガラス瓶などで保存しておくことが多いようです。
材料の準備
シンプルながら雰囲気のある食材が並ぶキッチンテーブル。すべて並べて集合写真を撮影したところで、さっそく調理開始!
まずはバラ肉300gを一口大程度に切り分けます。
先ほどの集合写真にちょっとだけ写っていたベーコンも、スライス1枚分ほど細かく切って使います。バラ肉料理なのにベーコンも?と、ちょっと意外ではありますが、これは和食でいう「かつおぶし」のような効果。コクを加える隠し味です。
続いて煮込みに使う香味野菜を準備。玉ねぎは薄い串切りに、ニンニクも薄切りにしておきます。
セロリの葉・細い茎など食べない部分を粗く切っておきます。パセリの細い茎の部分もいい香りが出るので、ローリエといっしょに煮込んでしまいましょう^^
材料を焼く~煮込む
鍋に油をひき、小さくカットしたバラ肉をに焼き目をつけていきます。
脂身の多いお肉なら、油をひかなくても大丈夫かもしれません。よくフライパンを熱してから、先生の鉄則「お肉は焼き始めは動かさない」を実践して、きれいな焼き目をつけましょう。
お肉に焼き目がつき脂が溶け出してきたところで、お肉を片側に寄せます。フライパンの空いたところでたまねぎ・にんにく・ベーコンを入れて一緒に炒めます。
玉ねぎがしんなりしてきたら、材料がヒタヒタになる程度にお水を加え、香味野菜(セロリの葉、パセリの茎、ローリエの葉)を加えます。
ここで塩とコショーを加えます。お肉300gなら塩は小さじ1杯・コショーは小さじ4分の1程度。量はお好みで加減してください。一度沸騰させたら、弱火で1時間ほど弱火で煮込んでいきます。
リエットを仕上げる~保存する
1時間ほど煮込むと汁気は少なくなり、お肉はすっかり柔らかくなりました。底にとろりとたまっているコンソメのようなスープには、和豚もちぶたの旨味や香味野菜の香りも凝縮されています。
この状態で冷蔵庫で冷まします。いったん冷ますことで味がお肉によく滲み込むのです。一晩程度冷ませば十分です。しっかり冷ますとバラ肉の脂が白く固まります。和豚もちぶた自慢のバラ肉のおいしい脂です^^
これをスプーンなどでよく取り除きます。あとで使うので別の器に取り分けておきましょう。
お肉に生クリーム(大匙3杯) ナツメグ(小さじ3分の1)を混ぜ、ローリエの葉を取り出したら、残りはそのままフードプロセッサーなどにかけて細かくしていきます。
本来リエットはみじん切りなどのお肉をよく煮込んでそのまま保存するものですが、もっと細かく挽いてしまってもよいので、お好みで調節してみてくださいね♪
今回はお肉の食感を少し残す感じに仕上げました。
塩味もここで最終調整してください。長く保存したい場合は塩を強くすることもあります。
ちなみに生クリームを入れるとコクが出て濃厚な味わいになりますが、保存期間をなるべく長くしたい場合は入れなくてもOKです。
リエットが出来上がりました。これをココット型やジャムの瓶くらいの容器にうつし、冷蔵庫で保存します。
作りたてのリエットは水気があり少しゆるい感じですが、冷えると全体がしっとりと固まります。容器に入れるときは、軽くたたいて中の空気をなるべく抜くようにしてください。
さらに、表面をラードなどの脂ですっぽり覆って密閉性を高めれば、冷蔵で数週間と長期保存も可能です。冷蔵施設のなかった時代の先人たちの知恵、ありがたく利用させていただきましょう。
先ほど取り除いておいた脂を、電子レンジなどであたためて伸ばしやすくします。この脂を、お肉の表面がすっかり隠れるように敷き詰めたら、蓋をして冷蔵庫で保存します。
表面に脂をひかなくても1週間程度は冷蔵庫で保存できますが、その場合もなるべくお肉を空気に触れさせないのがポイント。リエットの表面にラップを密着させるように覆い、密閉容器で保存しましょう。
300gのバラ肉から、おおよそ小瓶3つ分ほどのリエットが作れます。
リエットをたくさん作ったら、すぐ食べる分と長期保存する分にわけて保存方法を使い分けてみてくださいね^^
リエットを味わう
リエットの濃厚な旨味を味わうにはやはりフランスパンが一番。シンプルにバケットにのせて味わいます。
食べやすい厚さに切ったバケットにリエットを塗り、パセリのみじん切りを散らします。
見た目はとてもシンプルなメニューですが、食べてみるとおどろくほど濃厚で上品。香味野菜の香りと和豚もちぶたバラ肉の旨味が口の中に広がり、生クリームでまろやかにまとめ上げられています。
フランスでは、テリーヌなどと同様オードブルにもよく出されるリエット。少量でも風味が口の中に広がり、ワインと一緒に味わうにはうってつけのメニューです。
食パンではなく、バケットなのよね♪という先生の言葉にも納得。リエットの濃厚なおいしさと、バケットのドライな香ばしさとの相性が抜群なのです。
リエットはすでに味が出来上がっているので、パンに塗るだけでなく野菜などに和えて楽しむこともあるようです。クラッカーにのせてカナッペにしたり、チーズを加えたり、サンドウィッチ、サラダ、温野菜と和えるなど、オードブルの枠を超えて様々なバリエーションが思い浮かびますね。
ひとつだけ重要なポイントは、基本のリエットにはできるだけ混ぜ物をしないこと。今回は生クリームを加えましたが、基本は火の通った食材でできており保存性の高い料理です。他の味を加えたい場合は、食べるときにアレンジするのがベストです。
作り置きする料理なので、もちろんお弁当にも活用できます。
ぜひいつもの豚肉レシピのひとつに加えてみてくださいね♪
分量のおさらい
豚肉のリエット
- 豚バラ肉ブロック・・・300g
- たまねぎ・・・1/2個
- にんにく・・・2~3片
- ベーコン・・・1枚
- セロリの葉・・・1本分
- パセリ・・・1~2本
- ローリエ・・・1枚
- 生クリーム・・・大さじ3
- ナツメグ・・・・・・小さじ3
- 塩コショウ・・・・・・適量