梅雨らしい曇天の下、蒸し暑さに体力を奪われながら、料理研究家・臼居芳美先生のご自宅を訪れた取材スタッフ。今日は、和豚もちぶたで「豚の角煮」を作ります。
玄関をはいったとたん、キッチンの香ばしくて甘い香りに元気を取り戻し、「黄金のレシピ」第8回の取材開始です。
シンプルさがうれしい夏レシピ 本格的な豚の角煮を炊飯器で
今回の料理は「炊飯器で作る」というところがポイント。
大雑把にいえば、材料を用意して炊飯器に入れたら、主な調理方法は「待つだけ」です^^
暑い夏の台所で、長時間お鍋を見守っている必要はないのです。
とはいえ、出来上がりはおどろくほど本格的。
先生が事前に作っておいてくれた見本の角煮は、料亭の小鉢で供されるような上品なたたずまい。
プルンとした和豚もちぶた自慢の脂身も、層になっているお肉の部分も、タレがよく滲みてふっくらと煮あがっています。
食欲をダイレクトに刺激する香りに包まれて、いざ調理開始!
材料を切る
まず和豚もちぶたのバラ塊肉を切り分けていきます。
角煮を作る前に表面を焼いたり、煮こぼししたりという手間のかかる下処理はナシ。
炊飯器に入れて炊きこんでしまうため、お肉を切る大きさは自由。
大きな塊でも、一口大でも、同じように煮あがるところが便利です。
冷ました後でチャーシューのように切り分けるなら、大きな塊のまま煮てもいいのですが、今回は1切れ40gくらいに切り分けてみました。
小鉢に盛り付けるのにもちょうどいいサイズ。
500グラムの塊肉なら10数個に切り分ける感じです。
大根は、輪切りかその半分の半月切りにしておきます。
調味料
水は500ml、日本酒100ml、醤油が大さじ4、砂糖が大さじ3
そこにおろしショウガを大さじ1。市販されているチューブのものでもOKです。
今回の香味野菜はショウガのみですが、お好みでニンニクやネギを入れてもいいですね。
豚の角煮を炊きあげる 内釜の中で醸成されていく旨味と香り
ゆで玉子を作っておく
1回目の炊飯をしている間にゆで玉子を作っておきます。
ここであらためて、ゆで玉子の茹で方を。
お鍋に入れる水の量はなんと1cm!ほんのちょっぴりでいいんですね(@_@)
そこに生卵を置き、フタをして火にかけ、沸騰したら5分茹でます。
少ない水で茹でる理由は、殻をむいてみるとわかります。
殻と白身の間に空間ができるため、するすると面白いようにむくことができるのです。ぜひお試しくださいね。しかも省エネ♪
炊飯器は角煮で使っているので、今回は別の方法でご飯を炊いてみます。
先生が取り出したのは、栃木県の誇る益子焼でできた有名な駅弁の器。
地元の方はもうおわかりですね♪「おぎのや」の釜飯の、あの器です。
器ひとつでちょうど1合、1~2人分のご飯が炊けます。
おこげを作ることもできますが、決して焦げついたりはしないスグレモノ。
釜飯の器に1合のお米を入れ、お水を1カップを入れ器のフタをします。
小さ目の弱火で20分炊けば、土鍋で炊いたようなふっくらご飯の出来上がり。途中で火加減の調整はありません。
「1カップ」と「1合」のちがい
お米もお水も、料理の時は「1カップ」という表現をよく使いますね。ですが、お米の「1カップ」つまり「1合」の容量はおよそ180ml。
一方、水1カップというのは200mlのこと。同じ「1カップ」でも容量は大きく違うのです。
何かの時に慌てないために、頭に入れておきましょう。
1回目の煮あがり
そうこうしている間に1回目の炊飯が終わりました。お肉や大根には十分熱が通っているので、ここにゆで玉子を投入して、2回目の「炊飯」ボタンを押します。
炊飯器によっては加熱防止機能などがあり、すぐ2回目の炊飯ボタンが押せない場合があります。
その場合は、水を張ったボウルに内釜を入れて冷やしてから2度目のボタンを押してください。
あるいは今回の簡単レシピの中で、これが唯一の手間かもしれません・・・。
時間がある方は、2度目は炊飯ボタンでなく「保温」ボタンで2~3時間じっくり加熱する手もアリです。
前日の夜・お出かけ前などに「保温」をしておけば、
あとは自動的にできあがりますよ^^
2回目の煮上がり
炊飯器の蓋をあけると、ふんわりといい香りの湯気とともに角煮が現れました。
大根も煮玉子もいい色に煮あがって、見た目にも素晴らしい出来上がりです。
脂を減らしたい人におすすめ
煮あがった角煮を冷ますと白く浮き出てくる脂は、和豚もちぶたの上質なラード。
本当は旨味たっぷりなのですが、どうしても脂を控えたい人は、この白い脂を取り除くとカロリー控えめのあっさり角煮になります。冷めても脂っこくならないのでお弁当にもいいですね。
もちろん取り除いた脂もお料理に利用可能。チャーハンや野菜炒めなどに使えば旨味たっぷりに仕上がりますよ♪
和豚もちぶたの角煮で味わい尽くす 夏メニュー三種
煮あがった(炊き上がった)ばかりの和豚もちぶたの角煮で、いよいよ盛り付けと試食!
ため息満載の時間です(笑)
角煮丼・釜めし風
炊きあがったご飯を釜めしの器に盛り付け、角煮・大根・半分に切った煮玉子に小松菜の緑をそえたら、釜めし風角煮丼の出来上がり。高級デパ地下で行列ができそうな、堂々たる風格。おぎのやの器、大活躍でした(笑)
角煮チャーシューつけ麺
生の中華めんを茹で上げて、夏らしいつけ麺のアレンジも。
地元産の宮ゆずが練り込まれている麺で、さっぱり感もアップします。
「つけ麺」は今まであまり食べる機会がなかったという先生、急きょ、私たちスタッフが「取材」をされる立場に(笑)
器の使い方や付け合せなどを細かく質問しながら、手早く盛り付けしていきます。
「つけ麺のお肉は薄切りだったかしら?」とのご質問。でも角煮のままで大丈夫ですよ。お箸で切れますから^^
角煮チャーハン
角煮を切り分けるときに崩れてしまった部分などを使えば「もう1品」のおもてなしメニューができます。
角煮と青菜を細かく切り、ご玉子をからめてご飯と炒めれば、角煮チャーハンのできあがり。
味付けは角煮の煮汁にコショーを効かせます。
ひととおりの盛り付けが完了し、シンプルすぎる調理工程からは想像がつかないほど、豪華なメニューがテーブルに勢ぞろいしました。
自慢の脂身がとろ~りと煮あがったバラ肉の角煮には、香ばしいタレがよく滲みて、お箸で簡単に切れる柔らかさ。
ショウガがたっぷり入っているので甘すぎず、見た目よりさっぱりとした和風の味わいです。
そして、これでもか!という色の滲み大根と煮玉子には、和豚もちぶたの旨味がたっぷり。
「この見た目は男子ごはんよね~」という声が上がりましたが、食欲を刺激されるのは男女共通。
濃厚なタレとお肉の旨味で、男子でなくてもご飯や麺がすすみます。
涼しげなグラスには、先生お手製の梅ジュースも清涼感を誘う食卓。
付け合せは茹でたたっぷりのもやしと小松菜で、彩りも鮮やかです。
お肉を食べたら、ぜひ同量のお野菜を食べることを目安にしたいところ、という先生のアドバイス。
茹で野菜・温野菜ならたっぷり食べられるので便利ですね。
シンプルな味付けは、和風・洋風・中華・エスニックなどなど、自在にアレンジ可能です。アイディアしだいで、意外な組み合わせを楽しんでみるのもいいですね。
和豚もちぶたバラ肉の深い旨味が、全体を包み込み「主役」も演じる一方で、滲みこんだタレの香りは、お料理に「一本筋を通す」役割。どんな野菜や付け合せと食べても存在感ばっちり。
いい仕事をしてくれた炊飯器にも感謝しつつ(笑)、あっという間に完食となりました♪
今回、事前に先生からいただいたレシピに書かれていた工程は4つだけ。
「材料を切る」「炊飯ボタンを押す」「ゆで卵を作る」「再び炊飯ボタンを押す」。
暑い時期に長時間火を使うお料理はどうしても尻込みしてしまうものですが、今回は、材料を切る以外台所に立つ時間はごくわずか。炊飯器は夏のお料理にもってこいの調理器具です。
食材にはしっかりと火が通り、濃いめの味がついているので日持ちもします。冷蔵なら数日、冷凍すれば数週間保存可能。
そして食欲のなくなるこの時期、豚肉は疲労回復・夏バテにも強い味方。しっかりとスタミナを維持するには最適の食材ですね。
ご家庭の常備菜としてもおすすめの、夏メニュー「豚肉の角煮」でした。
分量のおさらい
材料
- ・豚バラブロック・・・・500g
- ・玉子・・・4個
- ・大根・・・適量
調味料
- ・おろし生姜・・・大さじ1 ※チューブのものでも可
- ・水・・・500ml
- ・酒・・・100cc
- ・醤油・・・大さじ4
- ・砂糖・・・大さじ3