年が明け正月気分も抜けないままに、スタッフは料理研究家・臼居芳美先生のお宅へ。
今回のレシピは「ウインナーシュニッツェル」。
子牛のもも肉をたたいて薄くのばし、衣をつけて揚げ焼きする、世界でもよく知られたウイーン料理です。
昨年に「串カツ」を取材した際に、本当はバリエーションとしてご披露したかったレシピ。とはいえ、バリエーションにしてはあまりにも存在感がありすぎる、ということで(笑)、回をあらためて主役としてご紹介することにしました。
本来は子牛肉を使うのですが、ヨーロッパでは豚肉・鶏肉を使う店も人気だとか。「とんかつ」に慣れ親しんだ日本では、やはり豚肉でつくる方も多いようです。
今回は、先生が実際にウイーンのレストランで食べたメニューを再現します。
シュニッツェルの醍醐味・その1肉を叩いて伸ばす
用意したのは和豚もちぶた・もも肉のブロック。
まずはきれいなピンク色をしたもも肉ブロックを、とんかつ程度の厚みに肉を切ります。
今回のブロックは縦長の形状なので長い方向に沿って包丁を入れましたが、可能なら肉の繊維に沿って切りわけます。
切り分けた大きさも、ちょうどとんかつサイズ。これを肉たたきで叩いて、小さなフライパンくらいの大きさまで伸ばしていきます。
先生曰く、ヨーロッパのお店で出されるシュニッツェルは、大きいほうが人気なのだとか。大皿に乗りきらないほどの大きさが、普通に一人分だったりするそうです。
使う肉たたきは、可能ならしっかりと重みがある大きめのものを使うと楽です。力で叩きつけるのではなく、重量を利用してお肉の上に落とす感覚だとあまり疲れずに済みますよ♪
叩きながら、筋の部分には包丁で切れ目を入れておきます。
これでもか、と叩きつづけて数分。元気な音が台所に響きます。
できれば夜中に調理するのは避けましょう(笑)
1センチ以上の分厚いお肉が数ミリの薄さになり、大きさは3倍程度に。
もも肉は赤身が多く繊維がしっかりしているためけっこう薄くしても問題ありませんが、できるだけ均等に薄くしていくのがポイント。出来上がりの形が変形するのを避けるためです。
お肉が十分薄くなったら塩コショウし、まな板から優しくはずします。
衣は小麦粉→卵→パン粉と、ふつうのフライと同じ順序。
小麦粉をうすく均等にまぶし、卵にくぐらせたら、お肉の形を整えながら細目のパン粉を全体につけていきます。
今回は、パン粉にたっぷりの粉チーズとパセリのみじん切りを混ぜた別バージョンも用意しました。
シュニッツェルの醍醐味・その2香ばしく揚げ焼き
フライパンに油をひいておきます。揚げ焼きなので使う油は少量。普通サイズのフライパンなら半カップ程度で十分です。
もともとはバターだけを使うものでしたが、最近はオリーブオイルを使うお店も多いとか。
今回はオリーブオイルとバターを大さじ2ずつ混ぜて使います。やはり少しバターがはいると香りがよくなるのです。
粉チーズ入りのほうは濃厚になりすぎないようオリーブオイルだけを使いました。
フライパンにお肉を置きます。火加減は全体を通して中火。
お肉が薄いので、火の通りはあまり心配しなくて大丈夫です。片面ずつきれいなきつね色を付けていきましょう。
揚げ焼きしていくうちにゆがんだり膨らんだりしてきたら、ヘラで軽く押さえ形を整えます。
両面で4~5分程度揚げ焼きしたらできあがりです。
ペラペラだったお肉はほんの少し厚みが増して、表面はカリッと仕上がりました。
つづいてシュニッツェルには定番の付け合わせ、ウイーン風の温かいポテトサラダを作ります。
ジャガイモを10個程度ゆでます。今回は「インカのめざめ」という品種を使いました。
ゆでたてのジャガイモは一瞬冷水に浸すと、素手でスルスルと皮むきができて便利ですよ♪
材料がひたひたになるくらいの水に固形ブイヨンを入れて煮立たせ、食べやすい大きさに粗く切ったジャガイモを投入して数分煮ます。
玉ねぎ1個を粗みじんに切って投入したら、お酢とオリーブオイルを同量入れます。
香りづけに先生お手製の粒マスタードも加え、塩コショウで味を調えたら、ほどなく火を止めてできあがり。
玉ねぎは余熱で火が通ります。
日本でいうポテトサラダとは全く別の、サラッとしたポテトサラダが出来上がりました。
このポテトサラダにはメークイン種のじゃがいもを使うことが多いようです。いったん冷たくしてから食べると多少のとろみがでますが、温かいまま出される場合も多いとか。
本場のレストランの味を再現ウインナーシュニッツェルを堪能
ネットでウイーンのお店のメニューをのぞきながら、ウインナーシュニッツェルを盛り付けていきます。
とはいっても、お皿からはみ出しそうな大きなシュニッツェルにポテトが添えられた、ごくごく気楽なお料理のようです。
大きなお皿の上に、きつね色に仕上がったシュニッツェル、ポテトサラダを添えたらできあがり。
ポテトにはイタリアンパセリを、シュニッツェルには輪切りのレモンを載せます。
シュニッツェルには、かならずレモンを添えるのもお約束なのだそうです。くし形、輪切りなどお好きなビジュアルでレモンを添えましょう。
大きなシュニッツェルをサクサクと切り分けひと口食べると、香ばしさが口いっぱいに広がります。
和豚もちぶたのもも肉は、しっとりと柔らかく、かみしめると旨味が溢れる絶妙な厚み。
細目のパン粉を使っているので、衣に重たさはありません。
レモンの香りと酸味がよく合う、驚くほどあっさりとした味わいは、いわゆる「揚げ物」とは全く違う美味しさ。
パン粉に粉チーズとパセリを混ぜたほうは、味わいにも見た目にも少しだけ濃厚さが加わります。
酸味の効いたポテトサラダとの相性も抜群。
ウイーンの専門店では、付け合わせはマッシュポテト・フライドポテトなどいくつかのポテト料理から選べるようになっていることが多いとか。
さらに先生の手作りパンのスライスも添えました。
ハムカツサンドを連想したスタッフが、シュニッツェル・サンドウィッチを堪能したのは言うまでもありません(笑)
ネットの情報も拾いつつお話を伺っているうちに、ほぼウイーンに「行ったつもり」状態のスタッフ。
でも先生から、ウイーンのお店ではジャムが添えられていることも多い、と伺ってビックリ!
と、とんかつにジャム?!とっさに貧弱な連想をしてしまったスタッフ。気が付くとキッチンのテーブルには、リンゴンベリー(コケモモ)という、酸味があるジャムの瓶が・・・。
おそるおそる少しジャムをつけて食べてみると、なんと納得!サクサクの衣に甘みと酸味がほどよく絡んで、さっぱりとしたもも肉の風味ともよく合います。
フルーティなソースで食べるような、さわやかな甘辛味を堪能できました。
いかがでしたか?「ウイーン風トンカツ」などと呼ぶには異次元すぎる、さわやかな味わいの肉料理「シュニッツェル」。
随所に先生の本場ウイーン情報をちりばめながらお届けしました^^
お肉を上手に伸ばすことができれば、調理自体はとてもシンプル。ぜひレパートリーのひとつに加えてみてはいかがでしょうか?
分量のおさらい
シュニッツェル(4人分)
- 豚もも肉ブロック・・・600g
- 塩コショウ・・・・・・適量
- パン粉(細目)・・・・・適量
- 小麦粉・・・・・・・・適量
- 卵・・・・・・・・・・1個
- オリーブオイル・・・・大さじ2
- バター・・・・・・・・大さじ1
- 粉チーズ・・・・・・・適量
- イタリアンパセリ・・・適量
ポテトサラダ・付け合わせ
- じゃがいも・・・・10個
- 玉ねぎ・・・・・・1個
- ブイヨンの素・・・大さじ3
- 酢・・・・・・・・大さじ3
- 塩コショウ・・・・適量
- オリーブオイル・・適量
- 粒マスタード・・・適量
- レモン・・・・・・1個
- イタリアンパセリ・適量